仙台市科学館での講座風景

平成18年度公開講座 「脳と心の探訪」

2007年2月から3月にかけて、企画展と平行して公開講座「脳と心の探訪」(全4回)を開催しました。脳の問題は市民の関心も高く、のべ584名の方が聴講されました。

第1回 「脳の老化は防げるか -画像で見る脳の老化-」
東北大学加齢医学研究所所長 福田 寛

福田 寛 所長 講師の福田寛先生は、本大学加齢医学研究所の所長です。人が年をとると脳がどのように変化するのか、多くのMRI断層画像を紹介しながら最近の脳の老化の実態をわかりやすく説明されました。加齢による脳の萎縮の状況を年齢ごとに多くのデ-タベ-ス化した断層画像を示しながら、人の脳がそれぞれ変化していく様相を話されました。講演終了後も参加者から「老化と脳」に関する多くの質問がでました。

第2回「江戸本草学は『脳』をいかに受け入れたか-
日本の「博物学」の特質をめぐって-」
東北大学国際文化研究科助教授 鈴木道男

鈴木道男 助教授 第2回の講師は、ドイツ文学者でありながら江戸博物学研究者でもある鈴木道男助教授です。江戸時代の人たちが脳をどう理解していたのか、精神(心)がどこにあると考えていたのか、から説きおこしはじめられ、江戸時代の日本は、西欧以外で博物学が発展した数少ない国であったこと、それは鎖国下の少ない情報交流の中で、本草学者、博物大名などによっておし進められ、すぐれた成果をえていたことを、仙台にも関連のある堀田正敦の「観文禽譜」(1831年)の精緻で美しい描写を例にあげながら、紹介されました。

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第3回「他者とは何か、自己とは何か-脳科学の視点-」
自然科学研究機構生理学研究所助教授
東北大学加齢医学研究所客員助教授 杉浦元亮

杉浦元亮 助教授 杉浦元亮助教授は、MRI(機能的磁気共鳴画像装置)を使用して、大脳メカニズムを解き明かそうとされています。MRIはPET法より空間分解能、時間分解能が大きく、「見る」「聞く」「体で感じる」などの情報を脳のどこが処理しているのかを推定することができます。他者を認識する時には「顔の記憶」「名前の記憶」「声の記憶」などの知識に関する“部品”や行動の認識という“部品”によりますが、脳のこれらの記憶をしまっている場所はさまざまなようです。このような脳機能マッピングから、心の部品(認知、運動の記憶、会話など)や心の仕組みがわかり、さらに心の部品がどのようにして生まれたのかが研究の対象となってきているようです。

第4回「脳の風景-神経細胞のかたち-」
東京医科歯科大学名誉教授 萬年 甫

萬年 甫 名誉教授 萬年甫名誉教授には、脳研究の歴史について近代科学としての脳科学の発展過程に焦点をあててお話を伺いました。近代科学としての脳科学は、比較解剖学や脳病理学的観点から脳の構造と機能との関係を解明することをめざし、顕微鏡の発達などを背景として進んできたようです。また、企画展でも展示された脳の連続切片標本群(布施コレクション)製作の経緯や学術背景などについてもくわしく解説いただきました。 アインシュタインは大正11年(1922)秋に来日、43日間、日本各地で旋風を巻き起こしました。なかでも12月初旬博士は仙台に2泊して講演や歓迎会に臨み、また、松島や瑞巌寺の散策を楽しんだことが記録されています。講演ではそれと合わせて、日本のゲッチンゲン大学といわれた東北大学や二高の関係者たち、石原 純、土井晩翠、田辺元、本多光太郎、愛知敬一、鷹部屋福平、鈴木清一などが博士との交流に大きく貢献したことについて、新出資料を交えてお話しいただきました。

 

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