第8回公開講演会 「地震の発生メカニズムと宮城県沖地震の発生予測」当日の様子

第8回 公開講演会
    「地震の発生メカニズムと宮城県沖地震の発生予測」

長谷川昭教授

講演者 : 長谷川昭
(地震・噴火予知研究観測センター教授)
開催日 : 2005年9月4日

 企画展「地震のかたち」(東北大学総合学術博物館のすべてⅣ)の関連企画として、2005年9月4日(日)に、仙台市科学館特別展示室で公開講演会を開催しました。2005年8月16日に宮城県沖においてマグニチュード7.2(最大震度6弱)の地震が発生した直後の公開講演会でもあり、この地震が想定されていた「宮城県沖地震」に相当するのか、そうでないならば今後の発生にどのような影響が考えられるのかなど、市民の皆様の関心にも応えられる講演会だったと思います。講師は、東北大学地震・噴火予知研究観測センターの長谷川 昭教授にお願いしました。

 地球上で地震はどこでどのようにおこっているのかに始まり、最近の地震学の発展とおもな研究成果、それらにもとづく今後の地震予知の精度などについて、分かりやすく丁寧にお話しくださいました。地球表層をおおうプレートの運動によって生ずるプレート沈み込み帯で発生するおもな地震のタイプは、プレート境界地震(宮城県沖地震や東海、南海地震など)、スラブ内地震(プレート内部でおきる)、内陸地震(2003年宮城県北部地震など)に区分され、それぞれ発生メカニズムと発生場所に特徴があります。想定される宮城県沖地震はプレート境界型の地震で、37年程度の間隔でくり返し発生しています。最近のくわしい震源分布の観測と地震波の分析から、ぶつかり合うプレート間の固着領域(アスペリティとよばれる)が周期的にくり返し破壊されることによって大地震が発生することが明らかとなりました。アスペリティの場所や面積は変わらないため、予想される地震発生の場所と規模の予測の精度が大きく向上したと考えられるとのことです。大地震発生にいたる過程では、プレート運動にともなってアスペリティに応力が集中し、応力がアスペリティの強度限界に達すると破壊が生じて地震が発生します。アスペリティの周辺部分ではプレートが固着しないため、地震発生をともなわないゆっくりしたすべりが生じており、このようなアスペリティ周辺のゆっくりすべりを注意深く監視することが、大地震発生時期の予測にとって重要であるようです。2005年8月16日に発生した地震では、想定される宮城県沖地震の発生域の南半部に位置するアスペリティが破壊されたと推定され、今回の地震ですべり残った領域が近い将来に破壊されることが予想されるとのことです。この予測の精度の向上と地震発生モデルの高度化を目指して、現在観測体制が強化されつつあります。

 このように、地震研究の質と観測精度の向上によって、地震発生予測の精度が大きく前進していることは私たちにとって大変心強いことですが、残念ながら地震発生自体を回避することはできません。私たちが心がけなければならないことは、こうした研究成果を充分に活用し、来るべき地震発生に備えて、少しでも被害の程度を軽減するために今何をすべきか、何ができるのかを再度点検し直すことの重要性を痛感します。

 

このページのTOPへ