初期白亜紀まで浅い海の地層がほぼ連続してたい積した南部北上帯では、ベリアセラなどのアンモナイトが産出していました。しかし、それ以降白亜紀末までのアンモナイトは南部北上帯では産出しなくなります。なぜでしょうか。それは、当時のこの地域に海がなくなってしまったからなのです。前期白亜紀にはげしい造山運動があり、地層は強く変形し、断層で断たれ、花崗岩が激しく入り込みました。この造山運動で北上山地は隆起し、陸地になってしまったのです。
その後の前期白亜紀の末~後期白亜紀に、北上山地北部の一部の地域に海が入り込みましたが、南部は海に沈むことはありませんでした。したがって、北上山地の南部ではアンモナイトを含む地層である浅い海でできた地層は、前期白亜紀の前半で終わっています。
静かな浅い海だった北上山地ですが、前期白亜紀に激しい地殻変動が起き、その後はほとんど陸上にありました。この激しい地殻変動は、地層に含まれるアンモナイト化石も当然変形させました。アンモナイトは本来円に近い形をしていますが、北上山地の前期白亜紀までのアンモナイト化石はいずれも変形して楕円形になっています。とくに牡鹿半島産のジュラ紀アンモナイトの変形が強く、牡鹿半島では地殻変動が激しかったのかもしれません。