土と助け合う生物「キンコンキンってなんだ?」●企画展「土のけしき・土のふしぎ」 東北大学総合学術博物館のすべてⅨ

キンコンキンってなんだ?

植物の根は、生育に必要な水や養分を土から吸収する大事な役割を果たしています。その根には、ある種の菌類(カビ)が共生しているのをご存じですか?この、菌類(カビ)のことを「菌根菌」と呼びます。実に陸上の8~9割の植物種には、「菌根菌」が共生していると考えられています。

菌根菌の菌糸(アーバスキュル)

菌根菌にはいろいろなタイプがありますが、代表的な菌根菌は、「アーバスキュラー菌根菌」あるいは「VA菌根菌」と呼ばれるタイプで、ごく一部を除くきわめて広い範囲の植物種に共生しています。「アーバスキュラー菌根菌」が共生している根は、色素を使って染色してみると、根の中に菌類が入り込んでいる様子を観察することができます。「アーバスキュラー」という名称は、根の細胞の中にこの菌の菌糸が入り込んで形成される「アーバスキュル(樹枝状体)」に由来しています。

根と助け合う菌(カビ)

菌根菌が植物の生育に及ぼす効果

菌根菌は、植物の根の中から土の中へ広く菌糸を伸ばして、土の中の養分、特にリンを吸収して、それを植物に供給しています。一方、根からは植物の光合成産物である糖類などの炭素化合物が菌根菌へ供給されます。菌根菌と植物は、お互いに養分を供給しあって助け合う文字通り「共生」関係にあるのです。

菌根菌をうまく活用することができれば、リン分の少ないやせた土で、リン肥料を与えなくても植物が生育するのを助けることができます。リン肥料の主成分であるリン酸はおもにリン鉱石から作られますが、地球上のリン鉱石はあと50~200年で採掘されつくしてしまうと心配されています。そのため、リン肥料の値段も高くなり、農家は困っています。
私たちは、リン肥料に代わるアーバスキュラー菌根菌の利用をさらに進めるために、研究を進めているところです。

菌根菌の模式図

共生は4億年前から

アーバスキュラー菌根菌は、普通の菌類(カビ)とはずいぶんと違っています。菌類としては、0.1~0.5mmというきわめて大きな胞子を形成します。最近の研究の結果、この菌は、菌類の中でももっとも原始的な菌であることがわかってきました。さらに、最古の植物根の化石の中に菌根菌に類似した構造が観察されています。約4億年前、植物が進化し、その住かを水の中から陸地へと移してきた頃には、すでに根に菌根菌が共生していたらしいのです。今の陸上の多様な植物も、土の中の菌類との菌根共生という営みを数億年にわたって続けて、共に進化をしてきたのです。