おわりに●企画展「土のけしき・土のふしぎ」 東北大学総合学術博物館のすべてⅨ

おわりに

 企画展「土のけしき・土のふしぎ」は、「東北大学総合学術博物館のすべて」シリーズの9回目として企画されました。この企画展シリーズは、東北大学が創立以来100年の研究教育の歴史の中で生み出してきた学術財産を広く社会に公開すること、東北大学が今何をしようとしているのかを説明することを目的にはじめられました。「土のけしき・土のふしぎ」では、東北大学大学院農学研究科が生命科学研究科などと協力して行ってきた「土」に関する学術研究の成果をご紹介しました。
 土は、物理、化学、生物、地学など多分野の現象が複雑に組み合わさったふしぎな世界です。自然の法則だけでなく、人為も加わります。私たちの快適な生活のために、健全な空気や水を保つことが必要なのは皆さんご存じのとおりです。この企画展では、そこに「土」を加えることをご提案します。
 古代文明のいくつかは大河の下流域で発達しました。そして、何百年も繁栄がつづいたことはその文明人たちの英知のすばらしさを示しています。しかし、上流部の乱開発で豪雨時に土壌侵食がすすみ、下流域は洪水堆積物にうもれ、文明はしだいに衰退していったとの説があります。すなわち、土の管理が不十分であったことが文明衰退の重要な原因のひとつと考えられるようです。
 土の科学の課題は、土に住む生物と植物、土との物質の循環の法則を解明し、自然の土、および農作物を作りだす土を健全に維持することです。さまざまな作物生産や林木生産、ひいては次世代のすこやかな環境のために、土やそこにすむ生き物達との対話が進むことを期待しています。

 

東北大学総合学術博物館
東北大学大学院農学研究科
仙台市科学館