昔から知られている根粒菌でも、「どうしてマメ科植物だけが根粒菌と共生するのか?」、「根粒はどのようにできるのか?」、「こぶは作らなくても植物に役に立つ微生物はいないのか?」などわからないことがたくさん残っています。二つの生き物の関係は大変複雑ですので、その関係の謎解きは、遺伝子やゲノムといった最新の生命科学の手段で行われています。ゲノムや遺伝子と聞くと、お医者さんを思い浮かべる方も多いでしょうが、環境に優しい農業に役立つ研究もあります。
謎は徐々に解かれています。たとえば、根粒菌の遺伝子の中にマメの植物ホルモンの一つのエチレンの働きを弱める遺伝子が見つかり、この遺伝子がこぶを作りやすくすることがわかりました。また、いろいろな遺伝子を壊したマメに根粒菌をふりかけることによって、根粒菌を受け入れる専用のマメの遺伝子セットが必要であることがわかってきています。「こぶは作らなくても作物の成長を増す微生物」も見つかっています。しかし、どうして作物の成長を促すのかの仕組みはよくわかっていません。東北大学では、その微生物のゲノムを解読することにより、その仕組みがわからないか研究を進めています。
将来これらがつながり、「どうしてマメ科植物だけが根粒菌と共生するのか?」、「根粒はどのようにできるのか?」、「こぶは作らなくても植物に役に立つ微生物はいないのか?」という謎に答えることができ、根粒菌と共生するイネを作り出し、少ない肥料でイネを育てるという夢がかなうかもしれません。