東北大学総合学術博物館のすべて Ⅷ 「中国・朝鮮国境の大活火山 白頭山の謎」

白頭山付近の地殻活動と火山活動

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合成開口レーダー画像を用いた解析(SAR干渉解析)により得られる地殻変動成分の概略図

合成開口レーダー画像を用いた解析(SAR干渉解析)により得られる地殻変動成分の概略図
2時期に観測された合成開口レーダー画像の位相差を得る解析手法で、SAR 干渉法、干渉SAR 等と呼ばれます。位相差は2回の観測における人工衛星と地表面との間の距離の差に相当し、観測位置の差、地形による効果などを除去することによって、2回の観測間に生じた地殻変動による距離変化を求めることができます。 (提供:防災科学技術研究所 )

白頭山での活発な地震活動が噴火につながるのかどうかを調べるため、防災科学技術研究所と共同で、衛星に搭載した合成開口レーダーによって撮影した2004年と2005年の画像を用いた解析(SAR 干渉解析)を行ないました。その結果、この1年の間に白頭山の山頂は約2cm隆起していることがわかりました。この隆起量は、より深い場所からマグマが上昇し、地下約5kmの位置に、約0.001km3の量のマグマが蓄えられたとすると説明できます。白頭山における地震や地殻変動はこの観測のもっと前から続いていますので、実際には0.001km3以上のマグマがより地下深部から上昇してきていると推定されます。白頭山の隆起は、中国地震局による現地での測量でも確認されています。

このように、地震活動が活発になり、山頂での隆起が確認されたことは、やはり、地下でのマグマ活動の活発化を想定するのがもっとも自然であり、白頭山の地下では新しい噴火に向けての準備が着々と進行しているものと考えられます。

合成開口レーダー画像を用いた解析により得られた2004年と2005年の間の地殻変動

合成開口レーダー画像を用いた解析により得られた2004年と2005年の間の地殻変動
白線は1センチメートル毎の衛星と地表面距離変化を示す。(提供:防災科学技術研究所 )