小惑星探査機「はやぶさ」の実物大模型展示
3億km 離れた小惑星へ旅立ち、7年の歳月をへて、2010年6月についに地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。数々のトラブルにみまわれながらも小惑星のサンプルを回収して戻ってくるという偉業をなし、多くの人びとに感動を与えました。
このたび関係機関、関係各位の協力のもと、東北大学総合学術博物館、理学研究科、総務部広報課などが主催して、小惑星探査機はやぶさの実物大模型を展示する企画を実施しました。
このはやぶさ模型は実物と同じ大きさで、太陽光に対する本体の耐熱性能を試すための熱構造試験にもちいられたものです。
本体筐体の構造や断熱材は実物と同じ造りと材質でできています。太陽電池パドルをひろげた姿で横幅5.7mあります。直方体の本体筐体とアンテナ部、両翼の太陽電池パドルといった主要外観に加え、航行に必要な本体部の4 基のイオンエンジンや12 基の化学推進エンジンスラスタ、小惑星表面に接地して試料を採集するための装置であるサンプラーホーンや、採集した試料を格納して帰還時に地表に投下される再突入カプセルが再現されています。
さらに、補助アンテナの中利得アンテナ、位置確認のためのスタートラッカー(星姿勢計)、着陸時の制御に必要なレーザー距離計や高度計、観測のための蛍光X 線分光器、近赤外線分光器、可視光カメラ、3個のターゲットマーカーといった機器類のほか、小惑星表面を移動して観測する小型探査ローバー・ミネルバもちゃんとついています。
この実物大模型をながめて3億キロの宇宙の旅に思いを馳せれば感動もひとしおとなります。
また、はやぶさ模型のほかに、イオンエンジンのエンジニアリングモデルも展示しました。イオンエンジンの耐久試験にもちいられ、必要条件の1.6万時間をクリアして、2万時間の耐久性能をだしたものです。
はやぶさ計画は長期間にわたって計画、実行され、数多くの研究者や技術者たちに支えられたものですが、その中で東北大学の研究者も重要な役割を担っています。
小惑星のサンプルを採集する機構を開発した工学研究科・航空宇宙工学専攻の吉田和哉教授と、採集したサンプルの分析を担当している理学研究科・地学専攻の中村智樹准教授の研究を展示パネルで紹介しました。
はやぶさ計画にかかわっている東北大の研究者による講演も実施しました。前述の2名の研究者と、イオンエンジンの開発にかかわった工学研究科・電気通信工学専攻の安藤晃教授が、はやぶさ模型の前で講演をおこないました。
はやぶさに直接かかわる研究者の話をきくことのできる貴重な機会とあって大勢の聴衆があつまりました。
開期中の入場者数は14,089名。朝9時から夕方6時まで人が途切れることなくにぎわいました。解説パネルをじっくりと読んだり、ガイドボランティアの説明に熱心に聞き入ったり、来場者の関心の高さがうかがえました。