企画展 東北大学総合学術博物館のすべて Ⅺ
「まっくろ黒鉱ー驚きに満ちた鉱石ー」 開催の様子
総合学術博物館では、今年度の企画展として、「まっくろ黒鉱-驚きに満ちた鉱石-」を11月2日~28日の期間に仙台市科学館3階エントランスホールにて開催いたしました。
黒鉱とは、亜鉛、鉛、硫黄などの元素を多く含む、黒色の色調を呈した鉱石です。日本では、おもに秋田県北東部の北鹿地域に密集しており、小坂鉱山において古くから採掘されてきました。
事業化を始めた久原房之助氏は、この鉱山で採掘された黒鉱を「生鉱吹き法」と呼ばれる技術で精錬し、金、銀、銅、亜鉛等を製品化する工法を開発しました。
現在の黒鉱鉱床は、日本海形成時の海底火山活動にともなってできたことが、1960 年代ころに研究によってあきらかとなり、「KUROKO」の名は世界的にも知られるようになりました。
東北大学には、黒鉱研究をすすめてきた理学部の研究者の資料標本が数多く収蔵されており、一部は理学部自然史標本館に展示しています。
今回の企画展では、黒鉱鉱石標本などを通して、「黒鉱」とはどんなものなのかを紹介し、鉱山の歴史と社会との関係、そしてこの分野における研究状況を概観しました。また、DOWAホールディングス株式会社から、黒鉱に関連する貴重なコレクションを新たに寄贈していただき、それらの多くを展示しました。
展示入口には、実際の鉱山の坑道の入口に敷設される「三つ留」をDOWAホールディングスならびに卯根倉鉱業のご協力で再現しました。
入口をはいってすぐには、重さ30 キロの黒鉱の鉱石を展示し、また、中央部には黒鉱鉱床をイメージした展示台にさまざまな鉱石を展示しました。
各ブースでは黒鉱にまつわるエピソードや研究についての紹介をおこない、黒鉱から産出するおもな鉱物について研磨片をルーペで観察するコーナーも設けました。
展示の終盤では、黒鉱を作ったと考えられている海洋底の熱水噴出について触れ、熱水噴出口であるチムニー試料を中心に、海洋研究開発機構から借用しためずらしい生物や、潜水艦で撮影された映像などもあわせて展示しました。
生物標本のなかには、2001 年に世界で初めて発見された「鉄のウロコをもつ巻貝」(スケーリーフット)の実物液浸標本もありました。この巻貝は、インド洋中央海嶺のみで生息が確認されている非常に貴重な貝で、足のまわりに硫化鉄のウロコをまとうことで、カニなどの外敵から身を守る機能があると考えられています。
また、チムニー試料の周辺には、ユノハナガニ、ゴエモンコシオリエビ、ハオリムシ類の模型を数多く配置して、深海底での化学合成生物群集のようすを再現しました。
11月13日・27日の両日には、おなじく仙台市科学館にて、黒鉱を研磨して観察するイベントを開催しました。
参加者の方々には、黒鉱研究にさいして実際におこなう鉱石の研磨作業を体験して、きれいに研磨した試料をルーペで観察していただきました。作成した研磨片はおみやげとしてお持ち帰りいただきました。
なお、当日は多くの方々にお越しいただき、準備しておいた試料に不足が生じました。催しに参加できなかった方々には大変ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
開催にあたって資料標本類の提供や貸与をご快諾いただいた東北大学理学研究科、DOWA ホールディングス株式会社、独立行政法人海洋研究開発機構、ならびに展示場所をご提供いただいた仙台市科学館、展示プラン等のご支援をいただいた山田技術士事務所に厚くお礼申し上げます。
↓企画展の詳細ホームページをアップしました。