企画展 東北大学総合学術博物館のすべて Ⅶ
「大学・職人の街-100年の研究を支える匠の技術-」開催の様子
10月12日から10月28日までの17日間、仙台市科学館3階エントランスホールを会場として、企画展「大学・職人の街―100年の研究を支える匠の技術―」を開催しました。
東北大学は、2007年に創立100周年を迎えました。本学ではこの間さまざまな発明や発見をなし遂げてきましたが、それらは研究者の努力だけではなく、研究教育をサポートする技術者たちの努力のたまものでもあったのです。
今回の企画展では、東北大学の教育・研究活動を紹介する中で従来あまり取り上げられることのなかった、「大学の教育・研究を支える技術者たち(技術職員)」と彼らの「技術」にスポットをあてて展示をおこないました。
東北大学には、教員、事務職員、看護職員そして技術職員などが働いています。技術職員は、それぞれの研究分野の技術・知識を身につけた専門的な立場で、さまざまな場面で技術スタッフとして教育・学術研究を支えています。
東北大学100年の研究教育の歴史において、大学の教育・研究を支える技術者のはたした役割をふりかえり、彼らがうけついできたさまざまな学問分野の多岐にわたる技術と、その仕事振りについて展示をおこないました。
展示ブースは、さまざまな学問分野の多岐に渡る技術を、「街」の中の「店」の集まりとして仕上げ、展示品としては、「翼型模型」や「太陽炉実験施設模型」などの歴史的なものから、「アモルファス金属」などの最新のものまでさまざまな製品を展示しました。
また、技術職員が仕事場で実際に使用した小道具類も展示するとともに作業の様子を写真やビデオで紹介しました。
展示品にともなう解説は、その展示品がもつ研究上の成果や重要性だけでなく、その展示品に技術者がいかに関わっているか、どのような技術的な問題があるかという点に留意しておこないました。
この企画展においては、理学研究科、工学研究科、金属材料研究所、多元物質科学研究所、電気通信研究所、流体科学研究所などのご協賛をいただき、また多くの技術職員の方々のご協力をいただきました。
会期中14日間の入場者はのべ7,825人でした(会場に設置したカウンターによる)。
「大学・職人の街」実演・体験メニューを実施
企画展「大学・職人の街」では、大学で働く技術者たちの仕事ぶりを知ってもらうために、大学の技術職員自らが講師となって、実演と体験教室を実施しました。9個(下記)のメニューを用意し、会期中の土曜日と日曜日にのべ18回のプログラムを実施しました。講師担当者はのべ42名で、参加者はのべ500名(概数)でした。
ガラス細工をみてみよう!
理化学実験用ガラス機器の製作は東北大学伝統の技です。大学内に複数あるガラス工場の職員がそれぞれにガラス機器の製作作業を実演してみせた後、リクエストに応えて動物や花などの形をしたマドラーを作り、プレゼントしました。
一部の参加者には自分でガラス加工の体験もしてもらいましたが、熱して融けたガラスの取り扱いにはおっかなびっくりの様子でした。
簡単な金属加工をしてみよう!~キレイな音色の風鈴
アルミニウム、真鍮、銅の3種類の金属材料を加工して、オリジナルの風鈴を製作しました。
パイプ状の材料を金ノコで切断して4本にし、金ヤスリで切断面を磨き、ボール盤で穴あけ加工をして、音の鳴る部分を作り、そのパイプを吊るす支持部の金属板には、ポンチを使って数字やアルファベット文字を打ち込んだり、点描画を作りました。
アモルファス合金のできるまで!
単ロール液体急冷装置という機械を 使い、高速で回転する銅製の回転部に、熱して融けた金属をたらすと、ごく薄いテープ状になって冷えて固まります。
これがアモルファスで、強度や耐久性にすぐれた材料として利用されています。
まずアモルファス合金の強度を確かめる実験をして、続いてアモルファス作製の実演をおこないました(試料は本物のアモルファス合金ではなく錫を材料にしました)。
電気系のトラブルなどでうまく実演できないハプニングがありましたが、再チャレンジでヒュルヒュルヒュルッとテープ状の試料が飛び出した時には歓声があがりました。
蒸気のパワーを体験してみよう!
むかし石炭鉱山で坑道にたまった水をくみ上げるのに使われていた、蒸気機関の一つ「ニューコメン装置」を技術職員たちで再現しました。椅子に座った人を持ち上げられるようになっています。
体験したのは、子供たちだけでなく、体重100 kgの大人の方もいましたが、蒸気の力はそれを見事クリアーしました。
太陽炉を使って火をつけてみよう!
実験に使ったのは、仙台市内の三条町にあった研究用太陽炉施設の模型です。平面反射鏡などの可動部も本物同様に動かすことができるギミックを備えており、放物鏡の手前に太陽光を集光させることが可能です。
その集光部の一点に紙をセットすると瞬く間に焦げて煙とともに穴が開いていきました。
日没間近の低い太陽光線でも点火可能で、太陽のエネルギーを実感できました。
アンモナイトのレプリカを作ろう!
本物のアンモナイト化石を型取りして、レプリカ(複製模型)を作りました。模型材料にはお湯で融けるプラスチック樹脂を用いたので、短時間で簡単に作ることができました。
化石の標本を作ろう!
仙台市内の地層から採集してきた化石の入ったブロックを、千枚通しや小ハンマーなどの道具を使って丁寧に割っていき、個々の化石を取り出す作業をしました。
作業を始めるとみんな夢中になります。時間が足らない中でも、取り出した化石の補強や、鑑定作業、ラベル作りもして、立派な化石標本に仕上げました。
石を薄くして顕微鏡で見てみよう!
あらかじめグラインダーで途中まで削っておいた試料を、手作業で研削して、数ミクロンの薄片を作りました。
偏光顕微鏡で試料の状態を確認しながら、ちょうどよい厚さになるまで仕上げていきました。一所懸命磨きすぎてなくなってしまったり、ガラス面を磨いてすりガラスを作ってしまった人もいました。
作った薄片は、偏光板ではさんで偏光像を見られるようにしました。
ミクロの金属加工を見てみよう!
技術職員が自作した装置を使って、放電により金属をミクロ単位で加工していく様子を見ました。
数10ミクロンの穴のあいた、電子顕微鏡用の絞り部品などがこの装置により作られます。人の髪の毛の太さよりも細い穴です。